資格の使い方 ~試験合格後に広がる世界~ 「オンライン研修」コースに参加してみた

今回参加したコースは資格の使い方 ~試験合格後に広がる世界~です。
IT エンジニアのキャリア形成に資格は道具となります。
とはいえ、資格をとればそれだけで収入アップになるかというと、なかなか難しいものがあります。下手をすると、「資格マニア」と呼ばれたり「資格なんて役に立たない」と言われたり、ということもあるかもしれません。
このコースでは、そんな資格の活用方法やキャリア戦略について紹介いただきました。実例を豊富に折り込みながら語られたので、なるほどと思いながら魅き込まれました。
なお、今回はこの “参加してみたシリーズ” では初めてとなる オンライン研修 の参加レポートです。
資料は画面共有で表示されるほか、事前にダウンロードするようになっていました。ただし、資料はあくまで進行や学習サポートの位置づけであり、重要なことは話している内容というもので、オンラインで集中させる工夫なのかも知れません。
まだ、馴染みの浅いオンライン研修ですが、休憩時間には画面にタイマーを表示するなどの工夫もあったり、このレポートでも気づいた点を書いていますので、ぜひお見逃しなく。
では、コース内容をレポートします。
もくじ
コース情報
前提知識 |
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受講目標 |
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講師紹介
このコースで登壇されたのは 三好 康之さん です。

資格対策のカリスマながら、ビジネス/マネジメント ( プロジェクトマネジメント 含む) と幅広く研修でき、どんなコースでも高い満足度を獲得
さまざまな資格をお持ちで、中でも JAPAN MENSA 会員というのは驚かされました。この資格をどうして取得したのか、どう使っているのかも、後ほどレポート内で紹介します。
つづけて、今日の研修内容をスライドで共有いただきました。
資格で収入アップは可能か?
最初のテーマは収入アップは可能か、というお話です。これはとっても気になるテーマです。
現在の働き方の動向と、三好さんの経験談も含め、紹介いただきました。
- 会社によっては資格をとると報奨金が出るところもある。そのような会社に行くのも一つの手
- 副業で収入を上げる
- 厚労省が公開している労働契約の雛形では競業でなければ認める方向になっている。ただし念のため、会社に許可をとって、 OK をもらうというやりかたがベター
- 多くの場合、競業は禁止。プログラムを書くのも NG になるが、以下のように分けると OK
- OK: 本業では基幹系の COBOL システムのプログラムを書いているが、副業では iPhone アプリのプログラムを書く
- 経験上、直接の上司に聞いても、いままでの延長で考えて認められないことがある。相談する相手を選ぶか、動向や規則など理論武装していくこと
- 厚労省が公開している労働契約の雛形では競業でなければ認める方向になっている。ただし念のため、会社に許可をとって、 OK をもらうというやりかたがベター
- 転職して収入を上げる
- 起業して収入を上げる
これからの時代に起こること
“副業” や “転職” 、 “起業” において、これからの時代に求められる自身の価値について、深堀りしてきます。
- 多様な働き方は競争が激しくなる
- 副業容認が進むと、本業も副業者との競争にさらされる
- たとえば素人のカメラマン(副業者)でも、いい写真なら素材サイトで安く販売できるなど、プロ(本業者)と素人の垣根がなくなっている
- つまり自分自身が評価されて値踏みされ、そこを勝ち抜いていかないと収入が上がらない
- それまでの会社の看板が使えないことも
つまり、収入を上げるためには、これから幾度となく訪れる “自分自身が評価されて値踏みされる” 機会を勝ち抜く必要があります。そこで勝ち抜けない場合は、収入アップは望めません。
そのために、マーケティングの知識、つまりどうやったら売れるか(自分自身を買ってもらえるか?)について勉強し、自分の売り込み方を考えて実践していくことが必要になる、とのことでした。
マーケティング 3.0
ここで出てくるのが、フィリップ・コトラーが提唱するインターネット/ SNS 時代で必要になる「マーケティング 3.0 」です。
- プッシュ型の宣伝や過剰宣伝に対する嫌悪感
- これまでのセールスはプッシュして熱意を買ってもらうということがなされていたが、いまでは問題にもなりかねない
- セキュリティ上、飛び込みなどプッシュするセールスが難しくなっている
- (クライアントが)事前に価格や品質を徹底的に比較する
- とりあえず会ってセールスというのがなくなったぶん、徹底的に調べて比較する
これは、自分を売り込む時(副業、転職、起業等)においても同じことが言えるので、それを踏まえた戦略が必要になります。
- 自分を売り込む方法も、自分の品質を徹底的に磨いてひたすら待つインバウンド型が主流になる
- 資格を前面に出してプッシュしてもプラスにはならない
- 資格をとったら、ブログなどのオウンドメディアで自分をアピールし、見つけてもらう
- たとえば、会社勤めしている間から、自分は AI を勉強している、AIでこんなことができた、というのをブログで発信
- 企業が AI で何かをやろうというときに、まず AI の第一人者に行くが、高額だったり折り合いがつかず話が来ることがある
- AI ではないが、三好さんにもそういったケースがある
AIDMA と AISAS
この自分を売り込むプロセスで考えるのが、マーケティングでいう AIDMA です。
- A(Attention):注意をひく
- I(Interest):興味をひく
- D(Desire):欲しいと思わせる
- M(Memory):記憶させる
- A(Action):買ってもらう
ちなみに、この説明の際、オンライン研修ならではということで、スライドで注意を引く、ということを三好さんが工夫されていました。
オンライン研修での座学は、単調になりがちですが、三好さんは意識してオーバーな身振り手振りも交え、「飽きさせない」工夫をしてらっしゃいました
さらに、マーケティング 3.0 では AIDMA が AISAS となっています。
- A(Attention):注意をひく
- 交流会などでいろいろな人に会う
- オンライン交流会が主流になると、不特定多数で会う機会が少なくなるので、資格取得者の集まっているグループが有益
- I(Interest):興味をひく
- 最初の会話でマッチングを高める
- 資格を持っているアピールはしない。資格マニアの変な人と思われかねない
- 目的は、興味を持って後から検索してもらうこと
- S(Search):検索してもらう
- ここでブログなどが効いてくる
- 資格などのアピールをブログに書いておく
- A(Action):買ってもらう
- 一度いっしょに仕事をする
- ここで成功すれば、あの人は資格をとるためにちゃんと勉強しているんだと信頼を得られ、ほかの仕事に広がる
- S(Share):共有してもらう
名刺の例( AISAS の “S” = Search の実例)
ここで三好さんの名刺を例に出して、その目的や使い方が説明されました。
- 名刺の表側に会社やブログ、 Facebook の URL
- オウンドメディアに引き込むための戦略
- 裏面には業務内容、保有資格、所属団体
- 保有資格について聞かれても、その場で話題にしてもらうことが目的じゃなく、あくまでも自分のWebサイトを後で見てもらうことが目的なので、その場ではスルーする
- 名刺交換の場では、「好印象で、信頼が持てそう」と思ってもらうことに全力をあげる
なるほど、資格は取得してアピールするものではなく、あくまで自身の力を後付けで証明するもの、なんですね。
高速道路を使うように、資格を使う
資格の活用方法として、今までは「収入アップ」そのものの面から見てきましたが、「自身が成長」して収入アップするときにも活用できます。
- 生産性を高めるなど成長する方法は 3 つ
- 努力、反復練習、慣れ、自然成長(図の (1) 、S字の成長曲線)
- 考える力が身につくというメリットもあるが、時間がかかる
- 標準化やマニュアル、教育を利用する(図の (2) )
- 試行錯誤せずに最短距離を走れる
- 資格もこれに入る。体系化して必要なものに絞り込んでくれているので学習効率がいい
- 試行錯誤するべきなのはマニュアルや学習ツール、資格がないところ
- ブレイクスルー(図の (3) )
- いまのやり方では伸びないとき
- 例)Windows に限界を感じ Mac を覚えるなど
資格は図の (2) になり、ゼロから基礎を身に着けるまで最短距離を走れるとのこと。こういった未学習・未体験を学んで、自身の成長のために使うのも、資格の使い方ですね。
ただ、三好さんが注意されたのが、「勘違いすると “資格マニア” になる」でした。
- 「資格マニアは資格をゴールにしてしまい、資格を持っているから偉いと考えがちです。それでは反発されます。」
- 「つまり、資格をとってからがスタートラインであり、本当の勝負です。」
裁量を手に入れる
その次は、組織の中で資格を使って仕事を楽しむための裁量の話です。裁量とは、わかりやすくいえば、時間とお金を自由に使っていいよということです。
裁量を自ら勝ち取らないと、資格を取得する意味がないというのが三好さんのメッセージです。
- 資格をとろうとスキルアップのために勉強している人は、上司から勉強しろと言われない
- 勉強しろと言われるのは勉強していない人
- 裁量は与えられるものではなく、自ら進言して勝ち取るもの
- 優秀な上司は裁量をうまく使う(裁量を与えない上司は見限る)
- 自分がやったほうが早い仕事でも、部下の能力を見極めて裁量を与えて、自分の時間が空いたと考える
- ちなみに、マネジメントの本質は、いかに能力を見極めて、裁量を与えるか
- 優秀でない上司は口を出して管理することで成果を自分の手柄にする
- 優秀な上司は裁量を与えて部下の手柄にもする
- 部下の側としても、資格を材料にして裁量を手に入れる
その他の側面でも資格を使う
資格を活用する、最後 3 つの側面をサラッと紹介いただきました。
マネジメントで資格を使う
マネジメントでやるべきものの中に、 “率先垂範” (自分が先行して見本になる)があります。
ここで資格を使いましょう、とのことです。
- 自分が勉強して資格をとれば、部下にも勧められる
- さらに自分が資格を取得して裁量を勝ち取ったということをアピールする
- 自由や裁量のために努力する人が集まる
- すると、背中を見せるだけで、勉強しろと言わなくても「自分で勉強するような強い組織」になる
仕事を楽しむ/ストレスを無くす
今度は資格を仕事をするうえでのストレスを減らす方法についてです。
- そもそも必要性を感じてから勉強を始めるから、プレッシャーやストレスになる
- 必要性があるからがんばれるという声もあるが、それでは常に後追いで、(周りもやるので)常にレッドオーシャンになる
- 必要性を感じる前に、前もってその分野を勉強して備えておけば、自分自身がやりたくなる
- 必要とされるようになったときに自分を使ってもらえる可能性が出てくる
- ただし、(自分が)必要性を感じないものは多く、先を読み対象を絞り込む必要がある
- そこで、短時間で効率よく優秀な人材を育成したいという国家の思惑と利害が一致する情報処理技術者試験など国家資格を選択すると合理的
- 好きな仕事 = 上手くできる仕事、感謝される仕事
夢を追いかける
最後は、これまでのテーマとは少し別の、好きなことで稼ぐ可能性についてです。人生 100 年時代では、ひょっとしたら、そればメインになるかもしれません。
たとえば、三好さんは小説家になることを頭の片隅で考えているそうです。そのとき、多くの資格があれば、それが何かに使えないかということを考えることができます。それが糸口になることも。
最後には「好きなことで稼ぐ」というのも考えて、そちらでも楽しめるんだと思っていると、人生が面白くなっていくでしょう。
まとめ
このコースでは、最初に「資格はどのように活用できるのか」というテーマで、収入アップなど響きやすいテーマを掲げつつ、資格をとったあとにそれをどう生かすかという、より大きなテーマを解説していました。
単なるハウツーではなく、どう考えていき、どういうキャリア戦略をとるかについて学びました。単なる精神論でもなく、かといっていままでの職場のあり方べったりでもなく、三好さんの実体験をまじえて一つ上を行くための指針が得られたと思います。
資格取得を目指す人や、それを元に部下に資格を取得させたい人は、目標を明確化してモチベーションがアップできたのではないでしょうか。
また、SEカレッジではオンライン研修も増やしながら、講師も一緒になって、新しい研修をどのようにすると、効果が上がるのか、試行錯誤しながら研修を進めています。
ぜひ今後もご期待ください。
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