IT研修制度インタビュー | 株式会社グロース ~ゼロから研修制度を立ち上げる~
IT研修制度は、よくあるヒューマンスキルや階層別研修とは異なり、情報技術 (IT) を専門にするので、なかなか構築が難しく、また移り変わりも速いため、運用も難しいものです。
そこで、IT研修制度がどのようなものか、実際に企業様にお邪魔してインタビューして、そのコツなどを伺っています。
第6弾の企業様は、ゼロから研修制度を立ち上げたばかりの 株式会社グロース さまです。
今回は立ち上げに携わった現場の方にインタビューさせていただきました!
金融ソリューション部 チーフ
システムインフラ (サーバ) の上流設計・構築・運用保守まですべて担当
経験年数 6年
インフラソリューション部
システムインフラ (サーバ) の詳細設計・構築を主に担当
経験年数 1年
インフラソリューション部
システムインフラ (サーバ) のアーキテクチャ提案・設計と社内アサイン
経験年数 6年
もくじ
研修制度がなく、現場のOJTに依存していた
-今日はよろしくお願いします。
(一同) よろしくお願いします。
-SEカレッジをもとに、研修制度を立ち上げられたとのことだったのですが、まずは、立ち上げる前のことを伺えますでしょうか?
現場に依存して、OJT で教えていました。このため、その現場でスキルを上げて評価が高くなったとしても、違う現場にいくと、今までのスキルでは通用しなかったり、ということが発生していました。
それもあって、どの現場でも活躍できる人材を育てなければ、という問題意識がありました。
-研修制度が立ち上がる前に入社された惠さんは実際、どのように現場で教えられたのですか?
まだ1つの現場しか経験がないのですが、Windows/Linuxとかまったく知らないまま入社し、「現場で慣れろ」という感じのものを体験しました (笑)。
研修制度を立ち上げる前だったので、完全に現場依存でしたね (笑)。特にインフラの場合、現場依存すると、知識に偏りが出てしまいます。
わかりやすい例では、同じコマンドでもスタートから立ち上げるのか、ショートカットから立ち上げるのか、などなど、人によってお作法のようなものも、全く変わってしまっていました。
-確かに、変わってしまいますね。そのあたり、惠さんは入社1年ということなので、詳しく伺いたいところです。まずは、1年前に現場配属されたときは、どれぐらいのIT知識をだったのでしょうか
まったくのゼロです。前職はまったく違う業界・職種でした。
-そうなんですね! 前職では、どのようなことを仕事されていたのですか?
美容アシスタントをやっていました。
-とても珍しい! となると、前職ではパソコンを操作することもあまりなさそうですね
はい、ほとんどなくて、最後に、パソコンを使ったのは大学ですね。しかも Mac だったので、Windows とはショートカットも違いますし、ディレクトリ構成なども違ったので、そういった基本的な操作方法から、現場で学び始めました。
-本当にパソコン入門レベルからスタートされたんですね。先輩からはどんなところから教わったのですか
基本的なパソコンの操作は自分で学んで出来るので、先輩からは業務で使う Windows のコマンドプロンプトを使って、ディレクトリの移動、ファイル操作、IPアドレスの確認などから教えてもらいました。
その Windows が終わったら、Linux と続きました。
-. . . 結構、先輩も、かなり負荷が高いですね
もちろん、現場で余裕があり、スキルがある先輩をアサインしているので、フォローはしっかり出来るようにという前提で配属していました。
-そうですよね、未経験から育成するのは、とても時間と工数が掛かりますものね。では、その現場研修では、惠さんはどのようなことで苦労されました?
苦労が一杯ありすぎて、どれから話すか悩みますね (笑)
(笑) 用語とかかな?
用語にも苦労しましたが、あとで調べられるので、それほどでもなかったです。
一番に苦労したことは、配属当初、詳細設計の工程から現場に入ったので、習ったコマンドを打つこともなく、その詳細設計で何が求められていて、何からやればいいのか、さっぱり分からず、さらに、設計書もありすぎたので、「わからないことがわからない」という状態でした。
-確かに、習ったことがそのまま現場で出ず、まったく違うことをやることは苦労しますよね。その「わからないことがわかるようになる」にはどれぐらい掛かったのですか?
その設計工程が終わるころになって、はじめて「わかる」ようになったので、2ヶ月ぐらいかかったでしょうか。
-2ヶ月「わからない」状態とは、とても大変ですね。。研修制度が立ち上がる前は、こういった育成方法だったのでしょうか?
だいたい、そうですね。基本的には先輩・上司が現場の業務を経験させながら、それをもとに学んでいく、というやり方でした。このため、配属や人の相性によっても変わりますし、教え方も人によってまったく違っていました。
教え方は色々でしたね。手取り足取りフォローする人もいれば、「これやっておいて」で済ます人もいました。なので、現場依存の弊害で、「どこに配属されるのか、誰が先輩になるのか」で研修が変わってしまっていました。
研修制度について
これまで研修制度がなかった理由
-その中で、研修制度を作る動きが出てきたのですね。では、この制度はいつぐらいからスタートしたのですか?
2018年の11月からスタートしました。
-おお、できたてホヤホヤなんですね。一方で、2005年設立ということからすると、これ以前にも作る動きがあったのかも知れないと思うのですが
主体的に制度を立ち上げようとする「ヒト」がいなかったのと、誰もが受講できるように、偏りなくコースを用意するのが難しかったのが、原因でしょうか。
特定領域・製品のコースを提案したこともあったのですが、全員のニーズを汲み取れないと、私の上司に言われてNGになったことがありました。
-ちなみに、SEカレッジ以外で比較検討したものは、どういったものですか?
特定領域だけを扱うものを組み合わせてながら、比較しました。例えば、プログラミング系のみをやるところ、仮想化技術のみを扱うところ、クラウドのみを扱うもの、などなどを見ましたが、1ヶ月50万円だったり、1人10万円 / 1コース だったりしたので、コストが見合わないものばかりでした。
あくまで本人がスキル・キャリアを考える
-それは強気な価格設定ですね(笑)
とはいえ、インフラ技術の場合、機器などに依存するものが多く、研修制度として作りにくそうですが
そうですね、とても難しいところです。
とはいえ、OS はどこでも使うので、それを共通基盤としました。さらに、その中でも基礎となる部分をベースアップすることで、目的を明確にしました
-では、そのベースアップについて伺いたいのですが、まずはどういった方が対象だったのですか?
初心者や、経験が浅い方、エントリーレベルを対象に、上司と相談しながら、まずはOS、Windows/Linux の基礎知識・スキルのベースアップを目指したものにしました。
その目標に対して、種澤であったり私が、半年間の研修開催スケジュールをみて、その中から趣旨にあった基礎的なコースをピックアップして、社内に展開しました。
それをもとに、研修制度の対象者が上司と相談して、コースを受講する、というのでスタートしました。
-受講コースを最初ピックアップしていたのですね
はい。そのピックアップしたコースを足がかりに受講すると、対象者本人で「これを受講したい」という希望が出てくるので、その希望をもとに上司と相談して受講していきます。
少し補足すると、基本的には、本人が、
「コースを選ぶ」
「上司に対して、このコースを受講したいとアピールする」
ということをやります。その上で、上司から見たときに不足しているスキル・伸ばしてもらいたい技術について「こういった知識も必要だよ」といってフォローします。
なので、あくまで「上司から受けなさい」といったものではなく、本人から「こういうスキルを身につけたい」という希望がベースにあります。
-その「本人の希望」にこだわるのは、何か意図があるのですか?
現場で出来ていないことを学ぶのはもちろんですが、自分で「今後のキャリアや、今後、自分がどのようになりたいのか」、考えてほしいと思っています。
あと、上司がコースを指定すると、エントリーレベルの方は、指定されたままに素直に受講してしまいます。
そうではなく、そのレベルであれば、開催コースを見てもわからないことが多いので、自分で考えて調べます。その調べたことをもとに「なぜ、受講したいのか」上司に提案するので、その調べたことから、興味が湧いたり、視野が広がると考えています。
-なるほど、確かにそうですね。
となると、上司との相談しやすさが重要になりそうですが、現場ではいかがでしょうか?
現場が違うので、他はわかりませんが、私の場合、現場に上司がいるので、頻繁に相談できています。
私の現場では開催スケジュールが出たところで、メンバーが1ヶ月ごとに 3 ~ 5 コースを選んでスケジュールを出してもらい、それをもとに1人1人と話して、アドバイスなどしています。あとは、受講後も「どうだった?」と聞くようにしています。
こちらの現場では、業界未経験で入社したメンバーが2名いるので、自社の目標管理制度にしたがって、四半期/半期で自社の目標を立ててもらい、その目標に対して、不足しているものを考えて、コースを受講しています。
最近は、その目標で決めたコースだけでなく、他のコースも受講したい、という希望も出てきています。
スキルアップ目標は「最低限、身につけてほしい」で考える
-その目標となると、1年、2年、3年といったスパンでは、なかなか立てにくいと思うんですね。会社からはザックリこんなものを目指してね、といった指針は出ているのですか?
上司と相談したときに1年の長期目標と、短期目標を出しています。ただ、やっぱり、どのようなスキルを身に着けると良いのかわからないので、「最低限、必要とされるもの」をベースにしています。なので、今はそういった入門向けの資格がターゲットになっています。
やっぱり、長期目標を立てるのは難しいですね。
こちらとしても強制的に長期目標を持ちなさい、というわけではなく、まずは半年後、1年後の短期目標としています。
-とはいえ、長期目標がないと、いろいろな技術をつまみ食いしてきたけど、結局、1周回って戻ってきた、ということもありそうです
それはもう「あるある」ですね (笑) 。
現場でサーバ構築をやっていると、ネットワークや、データベース、その他いろいろな技術・サービスを触るので、その分、興味が移ろいやすいんですね。
-なるほど! ということは、その「あるある」は避けられないと?
いえ、最低限、これだけは「身につけてほしい」ということを決めていて、私の部署では LPIC をターゲットにしています。もちろん、現場で構築していると、ネットワークが面白くなって CCNA を取得したい、とか希望が出てくるんですが、「我慢して、まずは Linux をやってみて」と言っています。
というのも、そうやってつまみ食いしても、どんなインフラをやっても、結局、シェルなり、コマンドなりで、結局、Linux のところで困るんですね。
ただ、もちろん、本人の希望は聞いています (笑)。
-やはり、そういった「最低限、身につけてほしい」を決めるのには、資格は便利なのでしょうか?
そうですね。取得できれば、本人の自信にもなりますし。
技術的にも、LPICで出てくるパスやディレクトリの話は、とても重要なので、そういった知識面でも使いやすいですね。
私も上司と相談したときに、普段の業務の会話でも一通りの知識は必要になるので、基本情報技術者や応用情報技術者などを目標にしてみようとなりました。