IT研修 制度インタビュー | 株式会社エフ・エム ~若手向け研修で離職率10%以下~
IT研修制度は、よくあるヒューマンスキルや階層別研修とは異なり、情報技術 (IT) を専門にするので、なかなか構築が難しく、また移り変わりも速いため、運用も難しいもの です。
そこで、IT研修制度がどのようなものか、実際に企業にお邪魔してインタビューする連載を始めることになりました!!! これからよろしくお願いします!!
記念すべき第1弾の企業様は、 株式会社エフ・エム さんです。
紹介文にもある通り、社員教育に注力されているとのこと、取材させて頂くと、そのこだわりの内容や、その源泉にあるものが伺えました!
ぜひご覧ください!
もくじ
若手の技術研修がミッションの教育部
教育部 リーダ
-今日はよろしくお願いします!
よろしくお願いします。
-まずはエフ・エムさんにどのようなITエンジニアがいらっしゃるのか、教えて頂いてよろしいでしょうか?
もともとはインフラから始まったんですが、徐々にアプリ開発が増え、いまはインフラが60%ぐらい、アプリ開発が40%ぐらいです。
インフラの内訳は、
- データベース構築・保守
- ネットワーク構築・保守
- サーバ構築
この3つで、以前はヘルプデスク・サポートも多かったのですが、今は3つの分野に技術者が均等にいるような体制です。
-ありがとうございます。
では、アプリ開発はいかがでしょうか?
Webアプリケーションの開発が中心で、主に Java/C# が多いですね。
近年は学生を採用すると、配属希望が馴染みのあるアプリ開発になるので、インフラエンジニアの先輩の話を聞かせたり、縁の下の力持ち的なお話や、インフラのダイナミズムを語ってもらって、今年は10人の新人のうち、6割がインフラに配属となりました。
-なかなかインフラの魅力は伝わりづらいのにスゴイです。
つづいて、年齢構成はどのような分布でしょうか?
20代が35%、30代が30%、40代が25%、それ以上が10%です。
-とてもよいバランスですね。何か取り組んでいることがあるのでしょうか?
毎年新卒採用で一定数採用していることと、若手層への教育研修に注力しているので、一般的に3年以内の離職率が30%と言われているところ、エフ・エムは 10%以下 と非常に低く、新卒社員が現場で活躍できていることが背景にあると思います。
講師として研修にも登壇する教育部
-なかなか離職率高めの業界なのでスゴイです! では、その若手層への教育研修について、どのように注力しているのでしょうか?
まずこの規模 (社員数200名/売上25億円) では珍しいと思うのですが、技術教育の専門セクション である教育部があることです。
-確かに、採用など人事の業務の一部に教育研修があることが多いので、珍しいです
教育部は2名が専任で部長1名が兼任という体制で、若手向けのIT教育研修の企画から実施・運営、ふりかえりまで行っています。
若手向けの体制としては教育部だけでなく、1年目は新人1人につき現場の先輩がトレーナーとして必ず1人ついていて、教育部とトレーナーと新人で一緒に目標を立てて、毎月ふりかえりしています。
-毎月!! とても工数をかけていますね
はい。そのトレーナーとのふりかえりとは別に、1年目は教育部との面談が年間3回あり、2年目~5年目の間も、現場部門の評価査定面談とは別に、教育部との面談が年に1度あります。
-面談ではどんなことがお話にあがるのですか?
現場での人間関係の相談もありますが、技術的にどういうスキルが身についていて、今後こういったスキルを身につけたい、という内容が多いですね。
例えば、プロジェクトによって自分が身につけたいスキルとのギャップがあるケースもあり、希望の業務につけるよう、ソースコードを読んで自分なりに書いてみることを勧めたり、資格取得を促してみたり、と一緒に考えながらフォローしています。
-そうなると、教育部も現場でどんな技術を使っているのか、わからないと相談に乗れないですよね?
そうですね、私たち教育部も現場でITエンジニアの経験があるので、ある程度、把握しています。
-教育部もITエンジニアの経験がある、というのはこだわりがありそうですね
プロのITエンジニアが教育するという方針で、私も現場で開発をしていたときに、社長から 「技術がわからない若手に、技術を教えてくれ」 と声を掛けられて教育部がスタートしたので、そういった意図があったと思います。
なので、私たちは研修を計画・企画したりするだけでなく、実際に「教える」という講師役もやっています。
-!!えっ、教育部が講師もやるんですか!?
どちらかというと、研修の計画・企画より、泥臭く技術を教えることの方が多いです。「ここタイポしてるよ」とか (笑)。
エフ・エムは未経験の方を積極的に採用しているので、内定者研修からオフィスソフトの操作やVBAなどから手ほどきして、新人研修でのWebアプリケーション開発までプログラムしていて、すべての講師を教育部がやっています。
-それはスゴイ。内製でそこまでやるんですね。。ちなみに新人研修ではどんなことを重視しているのですか?
新人研修では、インフラからアプリまでIT技術をひと通り経験してもらっています。
この業界は必要とされる知識が幅広いので、一度にすべてを習得することは難しいのですが、研修期間にひと通りの技術を経験することで、新人それぞれが技術知識の「目次」を作ることができます。
その「目次」をもとに、現場に出てから必要な技術知識を深めてもらいたいと思っています。
物腰柔らかな近藤さん
社長がもともと新人研修の講師をやっていた!
-「目次」とはいい表現ですね! (メモメモ) 新人研修を内製で行うスタイルはいつからですか?
私が入社する前からずっとやっているので、恐らく20年近く前から行っています。実は私が入社したときのC言語の新人研修は、今の社長、中山がやっていました。
-ナント、社長は研修部門のご出身なんですか?
はい。私の新人研修を行ったときは営業も兼任しながら研修もやっていました。社長も元は技術者で、技術営業を行うようになり、その一方で教育研修にも携わりながら、社長になったという経歴なんです。
-なるほど!! 珍しいご経歴ですね。それもあって教育研修に注力しているのですね
もちろん社長だけでなく、エフ・エムでは野球部やサッカー部などスポーツが盛んで「後輩は育てるもの」という価値観が浸透していて、それで育った方が「今度は私も育てよう」というサイクルが回っているのもあると思います。
また各部門のマネージャに育成のミッションがあるので、その部門マネージャがメンバーの教育研修を管理しています。
20年以上続く社内勉強会とSEカレッジの役割分担
-配属後の教育研修でも教育部が講師となるケースがあるのですか?
教育部のリソースは新人研修の関連でかなり取られるので、さすがに配属後の技術研修の講師は外部でお願いしたり、各部門主催で社内勉強会 を開催しています。
-社内勉強会は現場負担があって、なかなか継続しにくいものですが…
半期に1度、各部門ごとに勉強会を計画して実施することがミッションにあるので、これも恐らく20年近く継続されています。
「技術で食べてるんだから、チームとして技術力を上げるのは当然」という考え方、文化が根付いているように思います。
あと社長が「次の勉強会は何やるの?」と口癖のように言うので (笑)
ここ1年のテーマはAWSやAzure、Oracle Cloudなどのクラウド技術、AI、セキュリティの最新テーマもやりますが、エンドユーザーに流通・コンビニエンスストア業界が多いので、その業界のビジネス慣習や業務知識も扱っています。
社内の研修ルーム
外部研修に参加することを普通にしたくてSEカレッジを導入
-配属後のIT研修では、その社内勉強会に加えて弊社のSEカレッジをご利用頂いていますが、どのように使い分けているのでしょうか?
SEカレッジは、まず若手向けに基礎知識を習得するためと位置付けしています。
現場部門の中には若手ならこのコースとこのコースを受講する、というものが決まっているようで、1つのコースに複数の若手がアサインされていることが多いです。
また、ベテランには自分の専門とは違う分野を受講してもらうようにしているほか、最新動向のキャッチアップで受講しているようです。
もちろん、ここでも社長に「どの部門でどんな人がどんなコースを受講している」というのをレポートして共有しています。
-なるほど! 直近6ヶ月で、のべ180名もの方が受講されているのは、そういった工夫があったのですね
他にも、SEカレッジに参加後、参加した方にコース内容のレポートを書いてもらって、それを社内で公開・共有しています。
コースのミスマッチを防ぐのが目的で、参加したのに期待したものではなかった、というのが続くと、やはり受講する方が少なくなってしまいます。
-それは良い仕組みですね。「参加してみたい」という意欲にも効きそうです
とはいえ、実は、社内の目標受講数はまだ未達なんです。
半期で1人3コース受講して欲しい、という目標があるので、まだまだなんです。とはいえ、あまりプッシュしないようにはしていますが、、、 マッチしないコースを受講するようになっても困りますので (笑)
-確かにそうですね。ただ逆に「研修に参加してよい」ということがそれだけ認識されているのですね
そうですね、SEカレッジの半期ごとのスケジュールをもとに社員は3つコースを選んで、部門が業務調整をして参加するようになっています。
なので、社員も外部研修を受講することへのハードルが低くなっています。
-ということは、昔は外部研修にいくハードルが高かったんですか?
そうですね、2013年にSEカレッジを導入する前は、外部研修費用がだいたい 1人10万円 だったので、研修を受講するにも申請が必要で、受講できる方も、それなりにスキルとキャリアがある方が前提でした。
なので、SEカレッジで「みんな誰でも受講してよい」と言えるようになりました。
-社内勉強会、SEカレッジと研修は充実されていますが、あえていうと教育研修ではどのようなことが課題に挙がりますか?
知識も経験も一通り積んだベテラン向けの、個々にあった技術研修でしょうか。
若手のうちは勉強したら、その分、伸びるような感覚を得やすいのですが、ベテランになると現場で技術的に困るということが少なくなり、落ち着いてしまいがちです。
一方で、クラウドやRPAの波で、今まで技術者がやってきた業務も自動化されてきています。
会社としては、業務が無くなるのであれば、逆に、積極的にお客様にクラウドやRPAのツールなど提案して、どんどんお客様に近い問題に取り組んでいます。
それだけにベテランが落ち着くのではなく、これまでのスキルとキャリアを土台に、新しい領域に踏み込んでいけるようなものが研修に欲しいと思っています。
-なかなかむずかしい問題ですね。SEカレッジでもベテランの方を刺激できるようなコースを考えたいと思います!
では、最後にメッセージがあればお願いします!!
エフ・エムでは毎年、大卒・専卒合わせて10名採用しています。
また、中途採用ではアプリケーションエンジニア(Webアプリ)からインフラエンジニア(サーバ、ネットワーク、DB)まで幅広く設計~開発(構築)経験者を随時募集しています。
弊社の研修制度でスキルを磨いてキャリアを積みたい、という方はぜひご応募ください!
-近藤さん、今日は、ありがとうございました!! 今後ともよろしくお願いします!
ありがとうございました。
取材まとめ
エフ・エムさんのIT研修制度を取材してまいりました。
若手への育成が離職率の低下に繋がっていること、教育部全員がITエンジニア出身であり、実際にも研修登壇されることなど、とても特徴的でした。
私自身は社長の教育研修への思い入れもあってか、社員が研修に参加することへのハードルがとても下がっていることが、それこそがとても貴重に感じました。
先日インターネットで話題になった開発マシンのスペックに関する論争がありました。
ITエンジニアがスペックの高いマシンを買うことに、いちいち背景を書いて稟議が必要な企業で消耗するより、ノールックで購入できるような企業に移ったほうがよい、という趣旨でした。
ITエンジニアが研修やカンファレンスに参加して知識を仕入れることにIT企業として抵抗がないことは、開発マシンの論争と同じかも知れませんね。
では、今後もこのIT研修制度を取材する連載をよろしくお願いします!!
また、取材に来て欲しいという企業様、お気軽にお問い合わせくださいませ!!
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