プロジェクト失敗事例から学ぶプロジェクトマネジメント 研修コースに参加してみた
今回参加した研修コースは プロジェクト失敗事例から学ぶプロジェクトマネジメント です。
失敗事例、、、なかなか表に出しにくいお話ですね。最近マネジメント界隈では「心理的安全性」というパワーワードがありますが、プロジェクトは失敗が許されにくいので、プロジェクトマネージャは心理的安全性が担保されにくい職種かも知れません。
そんな背景の中、このコースでは失敗事例がなぜ重要なのか、失敗とは何をもってして判断するのか、といったことを掘り下げながら、失敗をいかに防ぐのか、その貴重な情報が詰まった研修コースでした !!
これからプロジェクトマネージャになる方、プロジェクトマネジメントに不安をお持ちの方、そういった方にはとてもオススメのコースです!
では、どのような内容だったのかレポートします !
もくじ
コース情報
想定している受講者 | 特に前提知識は必要なし |
---|---|
受講目標 |
|
講師紹介
この「参加してみた」レポートでは初登場となる 三好 康之 さん です。三好さんはプログラマ、SE 、PM 、営業を経て、今は IT コンサルティング、執筆、乃木坂46 のサポーター、講師と本当に様々にご活躍されています。
資格対策のカリスマながら、ビジネス/マネジメント ( PM 含む) と幅広く研修でき、どんなコースでも高い満足度を獲得
執筆された情報処理技術者試験プロジェクトマネージャの対策書籍は、試験受験者数と同じ以上の刊行実績があり (!!) 、かなり驚異的です。
SEカレッジでは、主にプロジェクトマネジメント、コミュニケーションスキル、ビジネスインダストリ、資格、教養と、こちらも本当に幅広く登壇いただき、平均の参加満足度は 8点以上 (10点満点) をキープされています!
今日も受講者目線で「リラックスしながら聴いていただき、質問もしにくいでしょうから、休み中などに遠慮なく聞いてください」と柔らかにコースをスタートされました。
失敗事例について
まず今日のテーマ、失敗事例というものの性質や、集め方について解説いただきました。
失敗事例は公開されることがとても少ない
- 失敗事例は会社の信用もあるので、ほとんど公開されない
- 一方で、失敗事例はリスクマネジメントと密接に繋がっているのでとても有益
- 公開されているものは裁判事例や社会問題になったニュース
- ただし、失敗した後なのでどうしようもない
- 小さな失敗やヒヤリハットをいかに集めるのか
- まずは自社の失敗事例を集めることが重要
- 自社で集める仕組みがあれば受動的でも集まる
- 仕組みが無い場合は自分でコミュニケーションを取って集める
- 自ら取りに行ってないのであれば、どうすると集められるか考えてみましょう
他社の事例はどうやって集めるのか?
- 先程のように公開されないのでプロジェクトマネジメントのコミュニティなどに参加して他社のプロジェクトマネージャと繋がりましょう
- プロジェクトマネージャは話したがらないので、プロジェクトメンバーの人とも話をしましょう
- PMBOK ® や情報処理技術者試験の午後問題などに抽象化されて出てくる
- どこの誰のプロジェクトではなく、すべて仮名
- “ITプロジェクト 見える化” で検索して出てくる SEC がまとめた PDF資料 がある
- 定性的なリスク項目が 200 ~ 300 ぐらいある
たしかに、ニュースになる失敗事例は3年間に1件あるかどうかぐらいなので、本当に出てきませんね。またプロジェクトマネージャ向けのカンファレンスなどでも失敗事例をテーマとした講演は、ほとんどありません。
その中で、集める方法や、情報処理技術者試験や IPA の資料が使える、というのは、とても貴重な情報です。
プロジェクトの成功基準と失敗基準を持つ
「失敗」について、もう少し深掘りします。
- プロジェクトマネージャは自信があると楽しそう、無いと不安そうに見える
- どこから自信がでるのか
- 自分の成功と失敗の ものさし を持っている
- ものさし があると改善もできる
ここで三好さんから受講者の皆さんに質問されて、考える時間を設けました。
- 自分の成功/失敗基準と顧客や世間相場との差があるかどうか
- 顧客の基準はプロジェクト受託契約を確認する
- 顧客が持っている基準と差が激しいと訴訟などに発展する
- 自分の成功/失敗基準と他の人との差があるかどうか
- とくにメンバー
- 人それぞれ必ず違うものなのでケアしましょう
たしかにテストで 80 点を取ったら、成功と思うのか、失敗と思うのか、それは人の主観ですね。(個人的には 80 点でバンザーイしてきた人生です)
人それぞれスコープが違うので、特にメンバーに聞くというのは、とても良いプラクティスですね。
プロジェクトの現状
では、世間相場のプロジェクトの成功/失敗基準とは何か解説です。
プロジェクトにおける成功/失敗基準のパラメータ
- Quality : 品質
- Cost : 予算
- Delivery : 納期
納期と予算
先程のパラメータのうち、特に基準とその結果が見えやすいのは、 納期 と 予算 です。
(出展) 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会 企業IT動向調査2015_発表会資料 p.39 より
納期の遵守状況
- 100 人月 1 億円未満 -> 成功確率が上がってきている
- 500 人月 5 億円未満 -> 一気に失敗確率が高まる
この納期、予算のパラメータで成功するには、正確な見積もりが必要とのことでした。
品質
では、品質の成功/失敗基準は何でしょうか?
(出展) 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会 企業IT動向調査2015_発表会資料 p.41 より
- 品質の定義を見てみる
- 満足
- 不満足
- つまり顧客の満足度
基準がとてもわかりにくいですね…
品質の定義
- ISO9000 などの品質基準には 2 つある
- 明示された要求、ニーズ
- 暗黙のニーズ
- 言わなくてもやってるよね、は裁判の判決でも満たすべき品質に入っている
- 暗黙のニーズを見える化・吸い上げる必要がある
- ユーザーの信頼に繋がる
このため、「品質の、特に暗黙のニーズの基準を作る必要がある」とのこと。なるほど !!!!
暗黙のニーズの基準
ここでまた三好さんから質問され、それを考える時間が設けられました。
- 暗黙のニーズを見える化して共通認識にする
- ステークホルダーごとに期待を確認する
- ステークホルダーによって期待は変わる
- 立場・役割から真のニーズを探る
- 真のニーズとは?
- 法律で決まっている業務は暗黙のニーズになりやすい
- コンプライアンス/ハラスメント/環境経営まで言及できると信頼獲得の武器になる
- 業界のデファクト
- 法律で決まっていない、ユーザーが自由にできる業務は潜在的な期待になる
- ユーザーや既存の会計士なども定義がないので突っ込みにくい
- IT化をどんどん提案すると良い
- システム開発の手順
- 家を買う人が家の建て方を知らないのと同じ
- 例えば、ユーザーデータの移行や入力フォームや帳票の変更など
- ステークホルダー毎にどこまで知っているかどうか確認する
- 経営者、情報システム部門、現場利用部門など
- 重要なのはここでも失敗事例を共有すること
- 法律で決まっている業務は暗黙のニーズになりやすい
ここまで体系的に暗黙のニーズを聞いたことが無かったので「なるほど!」しかありません。。スゴイ。。。
実際の失敗プロジェクト
最後に、公開されている失敗事例を紹介いただきました。
- 情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集filter_none
- p.42 世間のプロジェクトマネジメント義務・ユーザー協力義務がどのような基準なのかわかる
- ユーザー協力義務
- プロジェクト計画時にユーザーに必要な作業や作業時間、体制をまとめておく
- ユーザー協力義務
- p.42 世間のプロジェクトマネジメント義務・ユーザー協力義務がどのような基準なのかわかる
- モデル取引・契約書filter_none
裁判にみる失敗プロジェクト
- 日本IBM と スルガ銀行
- 関連記事: IBMに74億円の賠償命令、スルガ銀裁判の深層 :日本経済新聞filter_none
- 16本の分割契約
- あるパッケージのカスタマイズを前提としたシステム開発
- カスタマイズが出来ないことが判明し別パッケージを提案
- 日本IBMが敗訴
- 完了した分割契約も賠償対象
- プロジェクトマネジメント義務違反があった
- プロジェクトマネジメント義務に以下が追加された
- 抜本的見直し説明義務
- 中止提言義務
- NTT東日本 と 旭川医大
- 関連記事: 失敗の全責任はユーザー側に、旭川医大とNTT東の裁判で逆転判決 | 日経クロステック(xTECH)filter_none
- 要件凍結後も追加開発を旭川医大が要望
- 高裁の判決
- 旭川医大のユーザー協力義務違反を認めた
- NTT東日本のプロジェクトマネジメント義務違反はなかった
- しっかりとプロジェクト義務を果たしたことを主張
民法の変更
ここで三好さんから重要な補足がありました。「ただし、2020 年に民法が変わります。」
- 委任契約でも成果物の完成責任を求めることができる
- 瑕疵担保責任がなくなり、契約不適合責任になる
- 最長5年になる
- ただし個別契約が優先される
この変更を補足して、このコースは修了しました。
まとめ
このコースでは、そもそも失敗事例はどういう類のものか、失敗基準とはなにか、掘り下げて解説いただきました。
特に暗黙のニーズや、失敗事例の参考になるものや公開資料はとても貴重な情報で、なるほど! と思うことばかりでした。
三好さんからも冒頭お話があったように、プロジェクトマネジメントのアンチパターンを知ることで、どこにリスクがあるのか予めわかり、失敗する可能性を低く抑えられます。
これからプロジェクトマネジメントを携わる方、プロジェクトマネジメントで悩んでいる方にはとてもオススメのコースでした!!
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